FASHION

2021.08.20

RH INTEREVIEW with CREATORS vol.2 後編 ~KIIT 武田 裕二郎~

「プレス」。ファッション業界ならではのこの職種はブランドを世に知ってもらうために欠かせません。しかし、成果を数値で測れないことが多いためブランドがプレスを持つことは後回しにされたり、ディレクターが兼任することは昔からよくある話です。RH Interview with CREATORS vol.2の後編では、良好な関係性を持ったプレスとブランドでシナジーが起こる過程を具体的に聞くことができました。PRの「本質」を鋭く突いているので、ファッション業界以外の広報などにも活かせる内容です。ぜひご覧ください。

 

① 「プレス」って、何?
② FACTOTUM代表・有働氏からの独立のススメ
③ KIITがPRを必要とした理由
④ 「PR」という固定概念からの脱却

 

①「プレス」って、何?

まず初めにプレス、アタッシュドプレスとはどのような職種を言うのでしょうか。

プレスとは一般企業での広報にあたります。ブランドを世間に知ってもらうためのPR活動が主な仕事です。その仕事内容は雑誌やWEB媒体、テレビタレントなどに衣装を貸し出すリース業務、シーズンルックやカタログなどの販促物の制作、雑誌やウェブ媒体への営業やタイアップの進行管理、新商品などが販売された際のプレスリリースの作成、展示会やショーなどのイベントの企画運営、SNSの運用などです。アパレル業界ではインハウスをプレス、PRを専門に行う会社をアタッシュドプレスと呼ぶのが一般的です。

今回はKIITがPRを委託しているアタッシュドプレス「TEENY RANCH」の久戸瀬さんに登場していただきました。

 

② FACTOTUM代表・有働氏からの独立のススメ

久戸瀬崇裕(TEENY RANCH代表 / PR Director)
岡山県出身。音楽の専門学校を卒業したのち、大手セレクトショップの販売員を経てFACTOTUMで販売、そしてPRを学ぶ。2018年にアタッシュドプレス「TEENY RANCH」を設立。KIITをはじめ、coeur、D/HILL、C.P. COMPANYなどいくつものブランドのPRを請け負う。趣味が覗けるインスタグラムはこちらから。

 

久戸瀬さんは前職のFACTOTUM時代からプレスを担当しており、その頃の様子から語ってくれました。

久戸瀬さん(以下敬省略)「有働さん(FACTOTUM代表)と働くことは本当に楽しかったんです。だから独立する気なんてさらさら無くて。満たされた日々を過ごしていました」

独立する気がそもそも無かったにも関わらず、そこに至った経緯はなんだったのでしょうか。

久戸瀬「有働さんから独立の働きかけがあったんです。「自分の力を試してみたらどうか?」って。目から鱗でしたが、有働さん自身が独立志向の強い方なのでこういった言葉をかけられたのかもしれません。会社も過渡期だったので円満な形で退社して、その3ヶ月後に今の会社を立ち上げました」

独立すると会社員では見ることができない風景が見えることは間違いなく、それが成長に繋がることを有働さん自身が強く感じていたのだと思います。それを可愛がっていた久戸瀬さんに進めたのは必然だったのかもしれません。

昔のKIITは前文の例に漏れず、武田さんがPRを含め全ての業務を行っていました。TEENY RANCHへPRを外部委託するようになったのはどのような経緯でしょうか。

 

③ KIITがPRを必要とした理由

武田さん(以下敬省略)「プレスの仕事を文字で並べると誰でもできそうな仕事に見えますが、コミュニケーションスキルや物事の判断などはかなり特殊なスキルが必要で、デザイナーと使う頭が全く違います。だから私はPRを外部に委託することを選択しました。TEENY RANCHは2社目のアタッシュドプレスです。知り合いづてで久戸瀬さんにお願いすることになったのですが、その最終的な判断は『信頼』です」

信頼、と一言で言ってもその尺度は主観的でそれを他人が測ることは難しいですが、久戸瀬さんの話は客観的にみても武田さんとの深い関係性が伺える内容でした。

久戸瀬「武田さんにはデザインに集中して欲しかったので、イメージルックの制作を自分に任せて欲しいと提案しました。武田さんの時代を読み取るセンスと、それをKIITとして表現できるスキルは群を抜いています。だからスタイリストからの評判もよく、着用したタレントからは頻繁に購入希望があります。こんなブランド他にありません。だからこそデザイナーにはデザインに集中して欲しいと思ったんです。ルックを作る際のモデルやスタッフのアサイン、撮影場所の手配などはデザイナーの範疇を超えているのでそのような時間の消費方法では無く、インプットする時間に使った方が間違いなくクリエイションに良い影響を与えると思ったんです。自分がその仕事を受け持つので、武田さんは散歩でも、美術館めぐりでも、旅行でもいいですし、とにかくインプットに時間を使ってKIITを今以上のブランドに育てて欲しいです」

これをTEENY RANCH設立当初にKIITを扱うタイミングで武田さんに提案したと言うのだから、それはかなり勇気がいることだったに違いありません。また、KIITとしても今までと違うやり方になることは変化を伴うことで提案を受け入れるかどうかは難しい判断だったと思います。これこそ『信頼』が前提になければ難しいことです。このお互いのジャッジはブランドとPRのあるべき姿だと言えるのではないでしょうか。

武田「今まで自分でやってきたイメージルック制作を今は全て久戸瀬さんに任せています。自分の仕事に集中できる環境が整ったので久戸瀬さんはKIITにいなくてはならない存在です」

結果的にイメージが刷新されてKIITの見え方が武田さんの求めるものに近づいたと言います。イメージルックはブランディングを担保するために重要なツールでブランドの人間も蔑ろにできるものではありませんが、外部に委託することでブランドが求めるものに近づくと言う一見排反に見えることがPRの動きで予想以上の結果になるということはプレスの仕事の醍醐味でもあります。

しかし、イメージルック制作に代表されるようにPRは成果を測ることが難しいのは事実です。信頼の中で変化を受け入れたブランドとしてPRに求める結果はなんでしょうか。

久戸瀬「お互いがキャッチボールできるコミュニケーションが取れていることが『結果』です」

費用対効果が数値として求められる昨今のPRにおいて、この言葉が意味する深みが武田さんと久戸瀬さんの2人によって具現化されます。

 

④ 「PR」という固定概念からの脱却

武田「2021AWにリリースする商品の中でWILD THINGSの別注があるのですが、それは久戸瀬さんにつなげてもらった別注です。ブランドをもっと大きくするには攻めの姿勢が必要と思っていた同じタイミングで久戸瀬さんから提案してもらいました」

KIIT × WILD THINGS ブルゾン ¥49,500 (tax in 9月中旬発売予定)


久戸瀬「ブランドの認知を広げるためには雑誌などの媒体に掲載してもらうことが近道ですが、今のメンズ雑誌でひとつの商品を取り上げてもらうのは昔に比べて難しい事情があります。だから話題を作って掲載につなげたり、インターナショナルブランドとの協業で認知を上げる方法を取ろうと思いました。もしかしたらPRの範疇を超えていることなのかもしれませんが、利益だけやクライアントの顔色を伺ってPRをするよりも、本当にブランドのことになることを主体的に考えて行動に移すことが今のPRに必要なことだと思っています。それが後々自分たちのメリットにつながるはずなので」

PRは時代の流れに伴って手法は刻々と変化します。だからこそ方法論に目が向きがちになるのですが、本質を捉えれば一見PR的な動きではないものの最終的にはブランド認知が広がり、ブランディングも向上するというPR最大の目的が達成されます。これはお互いが信頼し合っているからできることであって、一朝一夕には成り立ちません。その関係性ができているKIITとTEENY RANCH。成長過程のパズルの1ピースを手に入れたKIITの今後の成長が楽しみです。

Writer Profile

谷本春幸

Writer Profile

谷本春幸

PR / ライター / スパゲストハウスルルドリーダー・広報

EDIFICE、417 EDIFICE、JOURNAL STANDARD、WISMなどのプレスを経て独立。 フリーランスでライターを経たのち、群馬県・四万温泉の宿「スパゲストハウス ルルド」のリーダー兼広報に。現在は群馬に拠点を移し、フリーランスライターとの二足の草鞋で活動中。 INSTAGRAM:@haruyukitanimoto Twitter:@haruyukitanimo1